結婚とは

結婚とは何か

結婚とは何でしょうか。『新しい家族社会学』によれば、結婚とは、

  1. 社会的に承認された男女の性関係であること
  2. その結合関係には一定の権利義務が伴うこと
  3. 継続性の観念に支えられたものであること
  4. 全人格的関係であること

の4つの要素を併せ持っていると言われています。さらにこれ以外の要素として、結婚は必ずその社会の規範(法律・慣習・儀礼など)に従って行われるということも挙げられます。

しかし、家族の形態が多様であることを確認したように(家族とは何かを参照)、結婚のかたちも多様に存在することに注意する必要があります。”結婚”と”愛情”を結びつけようとすると、見合結婚をうまく説明できなくなります(そして後から触れますが「近代以前の結婚」も説明できなくなります)。性関係についても、確かに男女の性関係は結婚によって社会から承認されますが、近年では性的接触を目的としない夫婦(セックスレスカップル)も増加しており、この点への注意を払う必要もあります。結婚によって発生する権利義務も社会や文化によって多様に存在します。また、全人格的関係の面に過度に注目していると、婚前交渉の妊娠による結婚(できちゃった婚)を見落とすことにつながりかねません。

ともあれ、結婚が有史以来、人類の様々な社会で確認されてきた男女の結合形式であることは間違いありません。結婚によって、愛情欲求、性的欲求、生殖欲求、一人前になりたい欲求などが満たすことが目指され、社会的にも性的秩序の維持、成員補充、社会の統合などが目指されていくことになります。そして、先ほども書いたように、結婚のかたちや結婚を巡る環境は、時代や社会によって大きく異なってきます。西欧とイスラム圏の結婚形態は大きく異なりますし、日本だけで考えても30年前の結婚と今の結婚は、その傾向も意味も大きく変化しています。

 

結婚と社会階層:同類婚

「恋愛結婚」という制度下では、結婚相手の階層はランダムになると思われるが、そうではない。近代的恋愛は、「結婚したいという気持ち」に置き換えられること を思い出してほしい。ただの「好き」という感情なら、階層を越えるかもしれないが、結婚を前提とする恋愛では同一のライフスタイルを志向するもの同士で行われるケースが圧倒的である。それゆえ、夫と妻の階層は、一致しやすい。

ブルデューが言うように、階層は、他の階層との「差異(ディスタンクシオン)」によって確認される。その差異を認識させるのは、趣味や生活習慣などの「ライフスタイル」である。ブルデューは明示的に述べていない が、「家族」こそ、趣味や生活習慣などのライフスタイルを共有する単位なのである。

どの程度の家に住んでいるか、どの程度のモノを所有しているか、どの程度の趣味をもっているか、どの程度の食事をしているか、そして、どのような職業に就いているか。このようなライフスタイルの内容自体ではなくて、他の家族とのライフスタイルとの差異によって、社会の中での家族のランクが決まってくる。 “(山田昌弘・東京学芸大学教授『近代家族のゆくえ』新曜社)”

私達の交際関係の範囲は、無限の広がりを持っているわけではありません。私達は多くの場合、職場・学校・サークル・インターネット・友人などの限定された手段を通じて人々と知り合い、その中で様々な出会いが生まれてきます。その出会いの中でも、まったく自分と世界が異なる人よりは、共通する部分のある人との交際の方が、共通の話題も豊富で交際から結婚へと発展する可能性も高いようです。このように自分の属性(学歴・職業・社会的地位・趣味・地域)と 共通項を持つ人と結婚することを同類婚と呼びます。一方、自分の属性と異なる人と結婚することは異類婚と呼びます。

では、同類婚はどれく らい多いのでしょうか。まず学歴を例に考えてみましょう。下の表は、厚生省人口問題研究所の調査を元にした「夫婦の学 歴別同類婚指数」です。学歴とまったく無関係にランダムに結婚した場合の期待値を1とし、実際の件数がそれをどれくらい上回っているか(下回っているか) を表したものです。この表の対角線上のセルのうち、太字で書かれてある数字が学歴が共通する同類婚の値です。夫・妻ともに中卒である夫婦は2.78、高卒 である夫婦は 1.32、専修学校卒である夫婦は2.03、短大・高専卒である夫婦は1.92、大卒以上である夫婦は3.49と、いずれも基準値の1を大きく上回ってい ます。このことから、学歴による同類婚の傾向がかなり強いことが読みとれます。

 

夫婦の学歴別同類婚指数
(青字が夫、赤字が妻。※は標本数20以下のもの)
出典:厚生省人口問題研究所1988『第6次出産力調査:日本人の結婚と出産』
中学校
高 校
専修学校
短大・高専
大学以上
中学校
2.78
0.69
0.83
0.40
0.09
高 校
0.66
1.32
1.02
1.10
0.78
専修学校
0.53
1.00
2.03
1.11
1.09
短大・高専
0.14
0.54
0.96
1.92
2.39
大学以上
0.22
3.49

 

また、対角線の上方(黄色いセル)の数値は比較的大きく、対角線の下方(緑色のセル)の数値は比較的小さいことから、異類婚の中でも、男性は自分より低い学歴の女性とも結婚する傾向が強く、女性は逆に自分より高い学歴の男性と結婚する傾向が強いことも読みとれます。ただ、いずれにしても(中卒と大卒 の組み合わせなどのような)学歴の格差が大きい男女の結婚はごく少数であると言えます。

結婚における同類婚の割合

それでは、社会階層による同類婚はどれくらいの割合を占めているのでしょうか。この点については、社会学者による「社会階層と社会移動全国調査」 (SSM調査)の中で統計結果が出ています。以下の表は、1955年、1965年、1975年、1985年のそれぞれのSSM調査において、夫と妻それぞ れの父親の職業(出身階層を表す)ごとに同類婚の数を表したものです。

 

1955年の通婚表
サンプル数・・・1304
妻の父親
夫の父親
専門・管理
ノンマニュアル
マニュアル
自営
農 業
専門・管理
19
6
6
21
26
ノンマニュアル
1
5
4
13
8
マニュアル
4
4
17
22
46
自営
26
18
25
119
128
農業
21
12
38
135
580

 

 

1965年の通婚表
サンプル数・・・1164
妻の父親
夫の父親
専門・管理
ノンマニュアル
マニュアル
自営
農 業
専門・管理
19
5
6
17
30
ノンマニュアル
8
7
7
10
16
マニュアル
19
11
37
29
38
自営
23
5
21
93
90
農業
30
17
38
104
474

 

 

1975年の通婚表
サンプル数・・・1410
妻の父親
夫の父親
専門・管理
ノンマニュアル
マニュアル
自営
農 業
専門・管理
33
15
8
36
23
ノンマニュアル
8
6
16
19
18
マニュアル
8
8
33
32
57
自営
27
28
40
113
142
農業
21
16
58
107
538

 

 

1985年の通婚表
サンプル数・・・1309
妻の父親
夫の父親
専門・管理
ノンマニュアル
マニュアル
自営
農 業
専門・管理
36
16
11
37
25
ノンマニュアル
9
8
22
25
16
マニュアル
23
19
37
57
61
自営
34
29
50
127
117
農業
28
18
51
99
354

 

この数字は様々な視点から見ていく必要があります。たとえば1955年の専門・管理の父親を持つ妻で考えるならば、そのうち19人が同じく専門・管理の父を持つ夫と結婚し、26人が自営の父を持つ夫と、21人が農業の父を持つ夫と結婚しています。単純に人数だけで見るならば、通婚は開放的であるように見えます。しかし、当時の社会全体の母集団は圧倒的に農業の方が多く、専門・管理は相対的にわずかな数しかいなかったわけです。にもかかわらず、管理・専門の父を持つ夫と結婚した妻の数と、農業の父を持つ夫と結婚した妻の数が、ほぼ同じであるということは、専門・管理において強い同類婚傾向があることをうかがわせます。これらの通婚表を見てみると、特に出身階層が農業の男女で同類婚の割合が高くなっていることが分かります。

総サンプル数に占める同類婚の割合は、56.7%(55年)→54.1%(65年)→51.3%(75年)→42.9%(85年)と、全体として戦後一貫して減少していますが、これには農業人口の減少に伴う社会移動の活発化が大きな要因であったようです。同類婚割合から農業の同類婚を除いた数値で見ると、12.2%(55年)→13.4%(65年)→13.1%(75年)→15.9%(85年)であり、農業を除いた出身階層(父親の職業)内の同類婚は増加傾向にあると言えます。

 

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