SEO業界の都市伝説 クラスCのIPアドレス分散

何か最近、業界の過去の黒歴史を語ったりするキャラとして定着してスミマセン。

バッドノウハウとして生温かく見守って頂ければと思います。

黒歴史で思い出したのが、SEO業界の「IPアドレス分散」。

「IPアドレス分散」ってご存じでしょうか?

数年前まで検索エンジンのSEO対策には大きく「内部対策」と「外部対策」がありました。大まかに言って、内部対策は、WEBサイト内のテキストやタグやリンクによって対策キーワードの順位を上げること。外部対策は、外部からのリンクを受ける(被リンク)によってサイトの価値を高めていくことでした。

そして外部対策として、形態素解析した日本語をマルコフ連鎖でダミーテキストに変換することなどは以前書いた通りです。

SEO業界では割とこういう黒い手法を使って、外部リンク獲得用のサイトを量産していました。数百万ページとか作ったり。ドメインも別々にして、過去に色々なサイトからリンクを獲得した中古ドメインが良いという話があったので、中古ドメインを大量に購入していました(中古ドメイン市場があって、新規ドメインに比べて割高で購入します)。

そんなSEO業界に数年前に降って湧いた話がIP分散でした。ドメインを分散させるだけではなくて、そのドメインで解決されるIPアドレスも分散させるとSEO効果が高いという説です。

Googleのクローラーは同じIPアドレス(同じサーバー)で大量にドメインを同居させている業者を見抜いているので、IPアドレスも分散させれば別々のサーバーだと認識させることが出来るという話です。特にIPアドレスの..ccc.***のcccの部分、クラスCが分散できると効果が高いとされていました。

私としてはスパムサイトの量産は心が痛かったし、IPアドレス分散なんてGoogleも馬鹿じゃないんだからすぐ見抜かれると思ったのですが、会社から「他のSEO業者も外部対策でクラスCのIP分散をやっている。効果を実証したいのでやってほしい」と言われてIP分散サイトを作ることになりました。

クラスCのIP分散も専用業者がいます。クラスCで分散されたIPアドレスを100個単位などで、1つのサーバーに割り当てている業者です。国内業者と海外業者がありました。海外業者の方が1個のIPアドレスあたりの単価は安かったのですが、国内IPアドレスの方が良いのではないかという会社のこだわりがありました。

結局、競合のSEO業者も国内業者と海外業者を両方使っているという情報が入って、国内業者と海外業者の両方と契約して、合計で500個くらいのIPアドレスが使えるようにしました(海外業者とのコンタクトは会社の担当が英語が苦手だったので自分の方で取りました)。

IP分散業者からは、WHM、cPanelでつくられたホスティング管理画面が提供されて、まずWHMでサーバー全体の構成とドメイン設定を作っていって、cPanelで個別のサイト毎の設定を作っていく感じです。cPanelの設定が完了したら、PHPスクリプトを配置しました。業者によっては予め各ドメインのディレクトリからシンボリックリンクで同一のファイルを参照できる設定になっている所もあって、そういう所は単一のスクリプトで複数サイトを管理していた感じです。

それでIPアドレス分散が行われたダミーサイトを量産しました。ダミーサイトから出来るだけ自然な形でポータルサイトや顧客サイトへのリンクを張りました。IPアドレス分散を拡大されて、インドの業者からIPアドレスを購入するという話もありました。

結論からいって、このIPアドレス分散の効果はSEO業界の都市伝説だったかなと思います。検索順位に与えた効果は皆無と言っていいほど無かったと思います。検索エンジンのアルゴリズムのアップデートで対策サイトも殆ど認識されなくなりました。やっぱりGoogleは馬鹿じゃなかった。結局、自然なテキストで自然なサイトが認識されるということで、いまはSEO業者は外部リンク対策だと、アルバイトを雇って自然なテキストを書かせていると思います。IPアドレスに関係なく。

世の中、綺麗な仕事ばかりじゃないです。黒い仕事や泥臭い仕事も沢山あります。そして、それでご飯を食べている人達もいます。そして、輝くものを追ってやっと掴んだのが氷であったりします。クラスCのIPアドレス分散はそんなお話でした。あんまり、こういう仕事を続けていくと鬱になるので、オススメはしないです。