氏神とは何か

氏神神社

日本におけるカミの祭祀

日本人は古来から様々なカミを祭祀してきました。祭祀形態も地域や時代、社会構造によってきわめて多様に存在します。日本のカミ祭祀にあたっては、基本的に祭祀されるカミの性格、祭祀者、および両者を媒介する媒介者に注目する必要があります。

カミを祀る祭祀者・媒介者・信者などの祭祀組織において、祭祀者が一定地域の住人である場合、祀られるカミは「氏神」(鎮守)と呼ばれます。しかし、祭祀を実際に担当するのは、祭祀者を代表する「氏子総代」、あるいは祭祀者に関わる「神職」です。祭祀者の周縁には広い意味での信者や畏敬者の存在も無視できません。

氏神とは何か

日本のカミ祭祀は、さまざまな祭祀者、祭祀単位によって祀られています。この中でも特に村落単位で祀られるカミは氏神と呼ばれ、その祭祀者は氏子と呼ばれます。1つの村落におよそ1つの氏神を祀る祭祀形態が確立したのは近世になってからと考えられています。それ以前の中世においては、荘園を基盤とするカミ祭祀に代表されるように、近世以降の個別の村落を越える広範囲の祭祀形態が一般的であったと考えられます。今日でも、中世的な祭祀の名残をとどめる広範囲のカミ祭祀が残存し、近世的な氏神祭祀と重複しているケースも少なくありません。

明治以降は、神仏分離や神社合祀などの国家政策が氏神祭祀に大きな変容をもたらしました。神仏分離によって、氏神と神宮寺が分離されると同時に、祭礼も大きく変化しました。また、神社合祀によって村落内のいくつかの神社が統合され、1村1氏神化の傾向が強まりました。

氏の語源は,古代の氏族制社会における族縁原理(氏)に基づく守護神、すなわち氏族神(氏の神)に求められるとされています。

氏子とは何か

氏神を祭祀する氏子は、代々続く家族単位に規制されていますが、氏子入りの手続きなどによって家族員が祭祀者になることも可能です。氏子内部には、氏子を代表とする氏子総代・宮総代などの役職者があり、これらが交代で祭祀の中心となる場合が多いです。また、社家・祝(ほふり)・太夫・神主・禰宜などの神職が特定の家筋で決まっている場合も多いです。

氏神の祭礼

氏子組織を基盤として氏神の祭礼が行われます。祭礼は氏子総代が中心となって実行組織が編成される場合と、当屋などの祭礼当番が交代で務める場合があります。祭礼は基本的に、神迎え、神移し(お旅所、神輿)、供物供進、神人共食、奉納芸能・競争、そして神送りによって構成されます。このうち、祭礼の中心は直会と呼ばれる神人共食です。直会は、人間が複製しカミに供進した酒や食物をカミとヒトが同じ場所で食する儀礼であり、この儀礼によってカミを祀ります。神輿に移したカミを氏子の地域範囲に巡航する神輿巡行や御神幸も行われます。

祭礼では、お旅所において、巫女舞・田楽・猿楽などカミに様々な芸能が奉納されます。また、地域によっては、相撲・綱引き・競争・船競漕・競馬などがカミに奉納される場合もあります。これらの奉納は氏子組織とは独立した組織によって行われます。都市の祭礼では、観客を意識して山車や屋台を賑やかに引き回されますが、これもカミに奉納する意味があるとされています。

崇敬神社とは

崇敬神社とは、こうした地縁や血縁的な関係以外で、個人の特別な信仰等により崇敬される神社をいい、こうした神社を信仰する人を崇敬者と呼びます。神社によっては、由緒や地勢的な問題などにより氏子を持たない場合もあり、このため、こうした神社では、神社の維持や教化活動のため、崇敬会などといった組織が設けられています。