全関東学生雄弁連盟ディベートルール

全関東学生雄弁連盟ディベートルール

今はなき全関東学生雄弁連盟のディベート大会のルールです。ディベートリーグ・1998年版。当時の記録としてアップいたします。

第1章ファーマットと試合形式上の制約

1フォーマット

矢印は反駁の方向を示す。作戦タイム双方1分×2(1)肯定側立論(5分)(2)否定側尋問(4分)(3)否定側立論(5分)→肯定側立論(4)肯定側尋問(4分)(5)否定側第一反駁(4分)→肯定側立論(6)肯定側第一反駁(5分)→否定側立論・否定側第一反駁(7)否定側第二反駁(4分)→肯定側第一反駁(8)肯定側第二反駁(4分)→否定側第二反駁試合は(1)~(8)の順に進む。矢印で示された方向以外への反駁は許されない。作戦タイムは(1)~(8)の間に任意に取ることができる。2つの作戦タイムを一度に使うこともできる。

2DROP

相手の出した主張に対し反駁しないことをDROPという。DROPした場合、その主張が通る。DROPのアピールは必ずしも必要ではないが、行うことによりはっきりする。

3立論の特殊性

基本的に主張・立証は立論で示される必要がある。反駁における主張は、立論での主張に関するものである場合と、反駁において主張しなければ主張、反論する機会がなかった場合を除いてすべて採用されない。なお、審査員は立論には一切介入しない。

4尋問における主張

尋問における双方の発言は、立論・反駁で採用されなければ一切採用されない。尋問における発言の、立論・反駁での採用権は、尋問する側のみにあり、尋問された側はその尋問中に述べた発言の採用権をもたない。但し尋問した側が採用・利用した発言は、尋問された側も利用することができる。またこの採用は、その採用する発言にかかる論点(メリット/デメリットもしくは理由の内因性・問題解決性・重要性)中の発言すべてを採用したものとする。つまりメリット1の内因性に関する尋問中の発言を採用した場合は、メリット1の内因性に関するすべての発言を採用したものとする。尋問する側が発言を止めたにもかかわらず、尋問される側が発言を続けても、その部分にかかる発言は、審査員は一切考慮しない。

5反駁全般

反駁における不当な主張にも、その旨の反駁がない場合、審査員は原則としてこれに介入しない。但し、何の主張に対して為されたのかあまりにも不明瞭な反駁、特にその中でも不当な反駁を行うことによって審査員がその反駁を無効とみなすことがあるのはやむをえない。

NewArgument

これまでの議論の延長線上にない新しい論点のことをNewArgumentという。反駁する際にNewArgumentを提示してはならない。つまり、反駁する際に、立論で言うべき事を言うことや、第二反駁で第一反駁の流れに沿わない新しい論点をだすことは、NewArgumentの提示にあたり、認められない。

7第一反駁

第一反駁で認められる主張・証拠資料は、第一反駁で出すことが妥当と思われるものに限られる。反駁のための主張・証拠資料でない、つまり立論のための主張・証拠資料は立論で出さなければならない。第一反駁において相手側のメリット・デメリットの価値を逆転(TurnAround)させ、自らの立論にメリット・デメリットとして取り込むのは良いが、既に提示されたメリット・デメリットの理由として取り込んではならない。

8第二反駁

第二反駁での主張は第一反駁の議論の流れに沿ったものでなければならず、新たな論点は提出してはならない。第二反駁での証拠資料は議論の流れ上、第二反駁で出すことが妥当と思われる証拠資料に限られる。しかし肯定側第二反駁で新しい証拠資料を出すことは、余程のことがない限り、原則として禁止される。

9証拠資料による主張の省略

(1)証拠資料をつけてある主張を展開するときに、主張の根拠を証拠資料の中でしか述べていない場合、証拠資料の信憑性に有効な反駁がなされ、その結果証拠資料なし、となったならば、その根拠も証拠資料と共になくなり、その主張自体にも有効な反駁がなされたものとみなす。(2)主張の根拠を証拠資料以外にも述べている場合、証拠資料の信憑性に有効な反駁がなされ、証拠資料が切られてしまっても、その主張は証拠資料なしの主張となるにすぎない。(3)(1)(2)において、主張の展開上、証拠資料の信憑性が残っている場合、信憑性の薄い証拠資料付きの主張として扱われる。

第2章ルールの説明

1論題に挙げられた語句の定義

(1)基本的には肯定側の挙げたものがその試合の定義となる。(2)否定側が定義を行った場合、議論において以下の2つが採用された時に限り否定側の定義を採用する。1.肯定側定義の著しい不当性2.否定側定義の妥当性

2プラン(広義のプラン)

(1)プラン(広義のプラン)プラン(広義のプラン)には(2)プラン(狭義のプラン)(3)サブプラン(4)カウンタープランの3つがある。

(2)プラン(狭義のプラン)1.肯定側が立論において論題を肯定するために必ず挙げる(論題と同じでも良い)。2.プランは論題を充当しなければならない(反駁がない場合はすべての部分について論題を充当しているとみなされる)。3.プランを挙げなかった場合、論題そのものをプランとみなす。ただし、否定側がプランの欠如を反駁において指摘した場合はプランはないものとし、肯定側の負けとなる。

(3)サブプラン(補助的なプラン)肯定側のプランのうち論題を否定しないものをサブプランとする。サブプランを挙げる目的は以下の3点である。1.デメリットの発生を防ぐ2.プランとの併用によりメリットを発生させる。3.プラント全く別個に作用し、単独でメリットを発生させる。

(4)カウンタープラン1.否定側が論題を否定するために挙げる(挙げなくてもよい)。よって、カウンタープランの導入により発生するメリットは否定側が提示し、カウンタープランの導入により発生するデメリットは肯定側が肯定側第一反駁で提示することになる。2.マイナーリペア(現状の小さな変革)はすべてカウンタープランとみなし、カウンタープランは否定側立論において挙げなければならない。3.カウンタープランは論題を充当してはならない(反駁がない場合、カウンタープランのすべての部分について論題を充当していないものとみなす)。

3プランの取り込み

プラン・サブプラン・カウンタープランは相互にこれを取り込むことにより、そのプランから発生するメリットを吸収することができる場合がある(メリットの吸収はプランの取り込みと同時にこれを宣言して初めて成立する)。

(1)肯定>否定プラン・サブプランのうち論題を充当しない部分については、否定側はこれをカウンタープランに取り込むことができる。この取り込みは否定側立論で行われなければならない。(2)否定>肯定カウンタープランとプランが両立する場合、肯定側はカウンタープランを取り込むことができる。この取り込みは第一反駁で行われなければならない。

4フィロソフィー(基本理念・哲学)

1.論を進めていくときに価値の拠り所とする基本理念。自分の提出するあらゆる主張はこれと矛盾するものであってはならない。2.フィロソフィーは出しても出さなくてもよく、論点ごとに示される重要性と同列に扱う。よって特に主張のない限り、フィロソフィーによって示されている価値とそれ以外の価値との間に優劣関係はない。肯定側、否定側双方がフィロソフィーを提出した場合、それらの価値については比較の議論が為されない限り同価値と判断される。3.論点の重要性として扱うときはそのつながりを示さなくてはならない。4.メリットの重要性はフィロソフィーに依ってたつ必要はない。

5実行可能性

1.プランの実行可能性に関する議論については、純粋に物理的に不可能なもののみを実行不可能とする。また、それ以外のものはデメリットとして論じられるものとする。(実行不可能な例)必要人員が国の人員を越えてしまう2.実行可能性がないと認められた場合、プランそのものが否定されるのでメリット・デメリットは存在できない。よって実行可能性を否定された側はそれだけで負けとなる。プランとカウンタープラン双方の実行可能性が否定された場合、立証責任制度により否定側の負けとなる。サブプランの実行可能性が否定された場合、そのサブプランの効果のみ消滅する。

6フィアット

1.ディベートでは、客観的に見て、その政策を実行すべきかどうかが論じられる。そこでまず、論題の主体がプラン(サブプラン・カウンタープランも含む)を実際に実行したものとみなし、その上で、そこから生じるM/DMを比較衡量することになる。したがって、世論や国会議員が大多数反対である、といったことはプランの実行可能性の障害とはならない。このように状況が実行を許せば動作主体は実行したものとする仮定を作り出すことを、フィアット(Fiat)という。2.フィアットがきくのは論題の主体のみに限られる。主体以外のものが実行するプランにはフィアットがきかない。

7メッリト・デメリット

(1)メリット・デメリット成立の要件メリット・デメリットが成立するためには、論点が明示かつ次の3点が必要である。

1.問題解決性論点が示すプラスの利益またはマイナスの利益がプランから生じることが論理の飛躍(OverClaim)なく示されていること。

2.重要性その論点が単なる現象に過ぎないのではなく、本当にプラスの価値もしくはマイナスの価値をもつことを示す。重要性が示されていない論点については、重要性があるものと推定する。しかし、相手が重要性がないことを指摘し、且つそのため重要性がないと見做す旨の主張があった場合にはそれに従う。ある価値が他のある価値よりも大きいこと、あるいは他のあらゆる価値よりも大きいことの立証は、証拠資料付きの、あるいは理由付きの価値比較によってのみ可能である。メリット・デメリットは問題解決性と重要性でonesetであり、重要性が全く違うならば違うメリット・デメリットとして主張すること。

3.内因性その論点が示すプラスの利益またはマイナスの利益がプランのみから生じること。内因性が示されていない論点については、内因性があるものと推定する。しかし、相手が内因性がないことを指摘し、且つそのため内因性がないと見做す旨の主張があった場合にはそれに従う。立論において内因性を完全に証明することは困難であるため、立論において現状にその論点のメリット・デメリットが生じていないことを証明し、具体的に他のシステムでもそのようなメリット・デメリットが生じるとの反駁における議論で優越すれば、内因性は成立する。また、プランとカウンタープランに同じメリットまたはデメリットが直接論点として出された場合、内因性に関する議論は比較衡量に帰着される。

(2)論点ごとのメリット・デメリットの大きさ→比較衡量参照

8カウンターワラント

否定側が論題を充当する弊害の大きいプランを示すことによって論題を否定する、いわゆるカウンターワラントは認められない。

第3章勝敗の決し方

1論点主義と論点における優越の基準

(1)双方の主張が上記のabcについて行われているとみなしたうえで、さらに一つ一つの論点について、現行ルール及び議論の場で主張されたことのみを材料に、その優劣が検討される。これを論点主義といい、審査は論点主義に基づいて行われる。


(2)論点における優劣の基準の要素1.論理的理由付け論理的理由づけのある主張と無い主張とでは、論理的理由づけの有る主張が優越する2.証拠資料(エビデンス)論理的理由付けの優越が同等と見なされる場合、証拠資料付きの主張の方が優越する。なぜなら、単にディベーターが考えた論理的理由付けよりも、証拠資料上の科学的データ・専門家の意見のほうが、より信頼度・客観性が高いからである。ただし、この旨の反駁がない場合、論理的理由付き主張と証拠資料付きの主張は同等とする。証拠資料の証拠能力(調査方法・専門家の権威など)を攻撃することで証拠資料の客観性を削ることは可能であり、充分に削れた場合は、証拠資料による優越は失われる。証拠資料間での優越は、科学的データならば新しさ・精度、専門家の意見ならば理由付け・権威、等の優劣の指摘により決定する。3.エビデンス・反駁の時間的優先エビデンス・反駁は立論、一反、二反、の順にその有効性が逓減する。理由は、早い段階で表明したものの方が反論可能性が増すからである。特に第二反駁において提示された、これまでの議論の延長線上にない新しい論点の有効性・信頼性は皆無として扱う。この時間的優先の項目に関しては、議論の場における主張が特にない場合でも審査においては考慮される。

(3)各論点における主張の位置付けの確認個別の論点の優越の吟味の後に、それらの論点により支えられているメリット・デメリットにおける各主張の位置付け(内因性・問題解決性・重要性)を確認する。その上で、論点の構造上少しでも通っている論点が比較衡量の対象となる。この作業に関しては議論の場で特に主張が為されていなくても審査員は確認・判定を行うことができる。

(4)論点内の肯定側・否定側双方の主張が全く互角な場合、あるいは優越をつけかねる場合論点内の肯定側・否定側双方の主張が全く互角な場合、あるいは優劣をつけかねる場合、立証責任制度によりその論点は消滅する。

立証責任制度全く双方の主張が互角であると判断した場合、立証責任制度を採用する。すなわち、論点を提示しかつその論点を守ることによって利益を受ける側が立証責任を負う、として立証責任を負う側の主張を不採用とする。ディベートでは、このような論点ごとにおいてと、後述する比較衡量においての2ヶ所でこの考え方を用いる。

2比較衡量

(1)各論点によって支えられているメリット・デメリットについて、内因性・問題解決性・重要性の三点すべてが少しでも残っているものが比較衡量の対象となる。論点ごとのメリット・デメリットの大きさ(線形性がある論点)重要性*発生確率*純利益(線形性がない論点)重要性*発生確率

(2)線形性について1.線形性が問題となる場合ある問題を表す数値が増加または減少すること自体がメリット・デメリットとして問題になる場合。(例)メリット・人口が増加する・危険性が減少する「問題解決性で示された変化量」-「現状のままでも生じる変化量」=「純利益」となる。2.線形性が問題とならない場合ある抽象的な問題が生じるか消滅するかがメリット・デメリットとして問題になる場合。(例)メリット・人口過密が解消される・南北問題が解消する

(3)重要性について重要性(value)は、はじめに示されたもの(=A)を1として反駁によりA=0,A近似値0,A<1,A<=1,A=-1(Turnaround)のいずれかとなる。つまり価値の比較では、低められたほうの価値がB<1,B<=1となる。(重要性の具体的な数字化は客観的には難しいが、根拠への反駁や重要性の低さの立証により、「かなり削られた」「この重要性は三角」などとして審査されるのはやむを得ない)

(4)純利益について純利益は、線形性があると認められる場合のみ考慮され、はじめに示されたものを1として反駁で変化量が削られれば減少する。(具体的数字化が困難な場合「かなり削られた」「この純利益は三角」などとして審査されるのはやむを得ない)

(5)発生確率について発生確率は、100%を1とする。立論でも反駁でも論じられない場合は100%とされるが、反駁によって削られる。(具体的数字化が困難な場合「かなり削られた」「この純利益は三角」などとして審査されるのはやむを得ない)

(6)重要性、純利益、発生確率の量に関する計算重要性、純利益、発生確率について反駁があった場合、またはあったと判断される場合、その量に関しては、審査員が主張内容にルールを適用して計算する。計算によっても具体的数値化できない類の主張内容の場合は、一律に極小と見做し、そう計算する。但しこの計算は当事者の特別の主張が行われていた場合は、それがルール上不当でない限り、尊重する。

(7)価値比較について「人類が滅亡する」等のそれが存在すると他のすべての論点が成り立ちえないように思われる論点が通った場合でも、その旨の主張が通ってはじめて(他の論点の価値A近似値0)となる。

3比較衡量の行われ方

比較衡量はこれをすべての論点について加えたものの比較をもって行われる。

4勝敗の決し方

勝敗は以下の2つの場合に分けて、決することとする。

(1)カウンタープランがない場合メリットの総量とデメリットの総量を比べてメリットの総量>デメリットの総量なら肯定側の勝ちメリットの総量<デメリットの総量なら否定側の勝ちメリットの総量=デメリットの総量なら立証責任制度により否定側の勝ち

(2)カウンタープランがある場合「プランにおけるメリット-デメリットの総量=A」と「ラウンタープランにおけるメリット-デメリットの総量=B」を比較してA>Bなら肯定側の勝ちA<Bなら否定側の勝ちA=Bなら立証責任制度により肯定側の勝ちA<0かつB<0の場合すなあちプランもカウンタープランもデメリットしか残らなかった場合でも上記になる。

第4章補足

1評価の対象

ここに定められた論理的な方法論のみが評価の対象となる。よって絶叫・立ち上がる行為等その他のアピールは一切評価されない。

2主張のナンバリング・ラベリング

主張を明確に、かつ、議論をはっきりとさせるために、主張を行う際には以下の例のようにナンバリング(番号付け)及びラベリング(見出し付け)することがきわめて望ましい。(例1.立論において)「メリット1点目、~が・・・します」「デメリット2点目の発生過程の1点目、~が・・・します」(例2.反駁において)「メリット1点目の発生過程の1点目に反駁します」「デメリット2点目の発生過程の2点目に関する反駁に関して反駁します」たとえナンバリングしなくても審査において考慮されることはもちろんであるが、あまりにも不明確である場合は考慮しようにもできないことは確かである。

3証拠資料の引用について

証拠資料は肩書き・出典・著者名を明示すること。インターネット上の文章を証拠資料として使用する場合は、出典・肩書き・著者名に加えて、文書作成の日時(更新日等)を明示しなければならない。また証拠資料は文の中略をしてはならない。これに反するものは証拠資料として認められない。雑誌・新聞の場合は*年*月号・*年*月*日付け等を言うこと。またどこまでが証拠資料の内容なのか、「以上です」等と言うこと。(例)証拠資料を挙げます。**大学教授**著「**」によりますと「・・・・・・。」以上です。

4不公正行為・非紳士的行為

言うまでもなく競技は公正に行われるべきであり、証拠資料の故意又は重過失による捏造等の不正行為には、没収試合による敗北の宣言も含めた制裁が与えられる。また、競技は紳士的に行われるべきであり、非紳士的行為も厳に慎まれたい。これらのことは、競技の上で守るべき規律として当然のことである。

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