運営がVIP待遇をするユーザーと数日間は塩漬けにするユーザーの違い

10個以上の会員制Webサービスを運営してきた経験から、ユーザーサポート対応に関して書きます。建前上は多くのWebサービスの会員は有料・無料の違いはあれど「平等」という原則になっていますが、実際はVIP待遇をするユーザーと数日間は塩漬けにしておくユーザーの違いがあります。お問い合わせ内容に依る部分が多いですが、一般論として裏側を書きます。

お問い合わせ内容は、ほぼリアルタイムに読まれている

まず、ユーザーがお問い合わせフォームからお問い合わせをした場合ですが、サポートスタッフはリアルタイムにお問い合わせ内容のフォームメールを受信しています。ディレクターやエンジニアも受信している場合が多いです。サポートスタッフを中心にメールが届いたら瞬時に目を通すような体制になっています。何か緊急事態が起きているかもしれないので。数日間も目を通さないことは殆どありません。あなたの声はすぐにサポートスタッフに届き、ディレクターやエンジニアにも多くの場合、同時に届いています。

でも、それに対して直ちに対応を行うのか、数日間は塩漬けにするのかは、ユーザー属性によって変わります。

広告主・スポンサー

問い合わせしてきたのが、広告主やスポンサーであった場合は緊急対応を行います。お金を貰っているので、かなり強引な削除要請にも応じることがありますし、お問い合わせ対応のためにWebサービスの機能開発や修正を行うこともあります。広告主やスポンサーのために直通の電話番号を公開することもあります。

メディア関係者・著名人

メディア関係者や著名人であった場合も緊急対応を行います。彼らの不満が溜まったらサービスの印象に打撃を与えるネガティブな記事を書かれかねませんし、メディアや著名人の記事で良いことが書かれたら絶好のアピール機会です。メディア関係者もその辺はよく分かっていて、お問い合わせをしてくるときには必ず媒体名(CNETとかITmediaとか)を書いてきます。提灯記事を書いてもらうように頑張るのです。

裁判沙汰

裁判沙汰も緊急対応を要するケースです。相手がサービス運営会社を訴訟覚悟で訴えてきて、なおかつその正当性が高そうな場合、「ヤバめ」ということで早急な対応を行います。ただ、このスタンスは運営会社に依ります。運営会社が大規模で既に沢山の訴訟を抱えている場合は、法務部門がしっかりしているので、捜査当局の発信者情報開示請求に応じるだけだったりします。小規模なサービスしか運営していない会社の場合は、総務的な人が法務も兼ねて専属ではない場合も多いので、訴訟をちらつかせて脅されると早めに対応する場合も多いです。
有料か無料か

有料会員か無料会員かはお問い合わせの優先度にはあまり影響しません。月1万円を越えるような高額な有料サービスは違いますが、数百円〜数千円のユーザー課金はちりつものビジネスモデルなので、その有料ユーザーのお問い合わせにコストを掛けているようではビジネスモデルが崩壊します。泡沫な有料ユーザーよりは、著名な無料ユーザーの方が優先される場合も多いです。著名な無料ユーザーの方が影響力が大きいからです。

泡沫な人

泡沫なユーザーは…。残念ながら数日間は塩漬けにされます。お問い合わせが殺到していない場合や、忙しくない場合でも、数日間塩漬けにすることがあります。即時にレスポンスを返すことは、新たなお問い合わせのループを招きかねないからです。機能に関する質問など、社内Wikiなどでテンプレートで返せる質問に関しては、サポートスタッフがテンプレで返します。技術的なお問い合わせがある場合は、ディレクター経由でエンジニアまでエスカレーションされますが、彼らが忙しい場合や興味を惹かない場合は「詳細はお答えいたしかねます」という結果になります。

ユーザー側の反則技

ユーザーが反則技を仕掛けてくることもあります。割とあったのが「会社に来る」です。会社所在地を調べて、そこで受付に突撃したり社員を待ち伏せして何とかしようとするユーザーもたまにいます。どうしても消したい書き込みがあったり、ユーザー課金が鬼のようになったり、単純に「ブログの使い方が分からない」という理由で会社に来たユーザーもいました。反則技は一見効果的に見えますが、この反則技に企業が応じてしまうと、悪しき前例をつくってしまうことになりかねないので、企業側は絶対に応じません。話だけは聞きますが、顧問弁護士や警視庁の担当者の連絡先が予め共有されている場合が多いです。

ユーザーサポートは東京にない場合も多い

以前、レンタル掲示板のティーカップ社があったときにもユーザーサポートは沖縄に置かれていました。長野や新潟であった場合もあります。人件費の関係で東京ではない場所でサポートのアルバイトを採用した方がコストが少なくてすむからです。沖縄などともチャットでリアルタイムにつながっていますが、「担当者を出してくれ」的な話をされても東京にいない場合が多いです。そういう意味で反則技は二重に効果がありません。

問い合わせする側のリテラシー

意味不明なお問い合わせや、過激な意見を含んだお問い合わせ、長文のお問い合わせも、レスポンスを遅延させる要因です。問い合わせする側のリテラシーが求められていると思います。簡潔に目的を伝えて、何故それが重要なのかが書かれていた方が、けっこうレスポンスのスピードがあがる場合があります。

論理削除と物理削除

技術よりなことも書くか…。投稿の削除には、大きく論理削除と物理削除があります。論理削除はデータベースからその投稿のステータスコードを「削除」に変えるだけ(データ自体は残っている)の行為、物理削除はデータベースからその投稿のデータを丸ごと消す行為です。サービス設計に依りますが、けっこうなWebサービスは「削除」ボタンを押しても論理削除である場合が多いので、「間違って消しちゃったデータを復活させたいです」という要望も比較的簡単に実現できる場合もあります。

社員

社員からのお問い合わせはどうか?その会社のポリシーに依ります。ただ、多くの場合、社員の声は著名人並に重要視されます。大事な同僚ですもの。