実は格安SIMのMVNOは大手キャリアではなくMVNEが卸した回線を再販している

(過去記事復活)。最近、格安SIMや格安スマホがブームだ。色々なMVNO(Mobile Virtual Network Operator 仮想移動体通信事業者)の会社が登場して様々な料金プランやサービスを提供するようになった。

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でも、格安SIMをどのMVNOにするかを決めるときに、料金プランやサービスや通信速度などが比較されることが多いけれど、MVNE(Mobile Virtual Network Enabler 移動体仮想サービス提供事業者)の視点で比較しているサイトは少ない。

MVNEってなに?

そもそもMVNEという言葉自体、初めて耳にする人が多いだろう。

MVNOは大手通信キャリア(ドコモやauなど)の回線の一部を間借りすることによってサービスを提供している。

しかし実はMVNEという事業者がキャリアとMVNOの間に入って、ドコモなどの回線へ接続し、ユーザーを管理し、通信制御をし、それをMVNOに卸しているのである。

いわば「MVNOの元締め」だ。MVNEがMVNOも兼ねる場合も多い。

MVNEの役割

総務省のガイドラインではMVNEはMMO(大手キャリア)とMVNOの間に入って以下の業務を行うことになっている。

・MVNOの代理人として行なうMNOとの交渉や端末調達
MVNOはMNOに対して、どのように回線接続するかなど折衝を行なう必要があります。また、日本の場合には携帯電話そのものがMNOから発売されていますから、これを調達したい場合なども折衝が必要になります。このような交渉をMVNOに代わって行なう業務が考えられています。

・MVNOの課金システムの構築・運用
MNOからは、MVNOに対して「通話明細情報」などの情報が提供されますので、これを管理し、顧客に課金するといった業務が必要になります。これをMVNOに代わって行ないます。

・アプリケーションプラットフォーム提供
現在の携帯電話は、通話だけでなく、たとえばメール機能やWeb閲覧機能も利用できます。このため、たとえばメールサーバーやWebシステム構築などの業務を行なうMVNEも必要になってくるでしょう。

・MNNOの顧客に対しての、ユーザーサポート業務の提供
MNOとの折衝の業務にもからみますが、障害情報など利用者へのサポートを行なうために必要な基地局やネットワーク等の障害情報や通信サービスに関する、その他の障害情報をMNOから受け、エンドユーザーに対応することもMVNEの業務に含まれます。

・MVNOに対するコンサルティング業務
MVNOの事業展開にとって何が必要なのかなどの診断、アドバイスをして、必要なシステムなどを導入します。

・MVNOに代わって、MNOと接続して、MVNOに卸電気通信役務を提供する
自前の通信設備を利用し、MVNOとMNOの間にたって、MNOからMVNOへの回線卸業務を行なう事業者もMVNEの業務としてガイドラインでは想定されています。

(ケータイ用語の基礎知識)

したがって、格安SIMでMVNO各社と契約すると言っても「ドコモと直の相互接続なのか、MVNEからの卸なのか、その再販なのか」という3形態が考えられる。また「どのMVNE系列であるのか」によってサービスの品質が違ってくる。

MVNEはどの会社がやっているのか

MVNEをどの会社が大手キャリアとどのような契約で事業を展開しているかは公開されていない。しかしAPN情報などによってMVNEはどこの会社が担っているのかの実像がかなり分かってきた(参考:https://blogram.net/2014/09/09/docomo-mvne-mvno/)。

OCN、IIJ、b-mobile、Freebit、BIGLOBE、So-net、InfoSphere、FENICS、WIRERESS GATEがMVNEであることが分かっている。それ以外の会社のMVNO回線(楽天モバイルやDMMモバイルやBIC SIMなど)はこれらMVNEから卸された商品を再販しているのである。

OCNをMVNEとするMVNO

OCN モバイル ONE
ぷららモバイルLTE
ASAHIネット LTE
Tikiモバイル LTE
@モバイルくん。LTE
NifMo

IIJをMVNEとするMVNO

IIJmio 高速モバイル/D
IIJモバイルサービス/タイプD
BBエキサイトモバイルLTE
BIC SIM
hi-ho LTE typeD シリーズ
Toppa! ポータブルカード
DMM mobile
Tikimo SIM
BBIQスマホ SIM d
ケーブルスマホ シリーズ
イモトのケータイ
Wonderlink LTE(Iシリーズ)
Wonderlink LTE(Aシリーズ)

b-mobileをMVNEとするMVNO

b-mobile X SIM
楽天ブロードバンド LTE(エントリープラン)
JTA SIM
楽天ブロードバンドLTE(エントリー2!プラン)
スマOFF

FreebitをMVNEとするMVNO

DTI ServersMan SIM LTE
U-mobile
freetel mobile フリモバ
もしもシークス
OMOTENA – SIM

BIGLOBEをMVNEとするMVNO

BIGLOBE LTE・3G

So-netをMVNEとするMVNO

So-net モバイル LTE
NUROモバイル LTE/3G

InfoSphereをMVNEとするMVNO

InfoSphere モバイルライトプラン for「フレッツ」
Tikiモバイル(LTEライト)
SANNET LTE
楽天ブロードバンド LTE(エントリープラス)
ポインティSIM
SkyLinkMobile
T-SIM
インターリンクLTE SIM
楽天モバイル
もしもシークス

FENICSをMVNEとするMVNO

@nifty do LTE
Wonderlink LTE(Fシリーズ)

WIRERESS GATEをMVNEとするMVNO

ワイヤレスゲート WiFi+LTE | ワイヤレスゲート

MVNEとMVNOの関係を考えるにあたっての注意点

このように格安SIMを取り巻く通信業界は三重構造になっているのだが、注意しなければいけないのはMVNEからの再販で売っているMVNOだからといって品質が劣るとは限らないことだ。それはMVNEとの契約内容に依る。そしてこの契約内容は公開されていない。

だから、通信状況によってはMVNEのIIJよりもBIC SIMが速いこともあるし、逆もまた然りである。MVNOはサービス面や価格面で差別化を図っているので、MVNEではない会社を選んでも失敗するとは限らない。

MVNEの会社を選ぶメリット

ただ、多くの場合はMVNEも行っている会社のMVNO回線の方が評価が高いことも事実である(MVNEも自社にとって損な契約はMVNOと結ばないだろう)。

そしてMVNE業者によってかなり回線の品質に差が出ている(FreebitがMVNEのMVNOはネットでの評判が総じて悪い)。

格安SIMを使ってみて回線に不満があったなど他社のMVNOに乗り換えるとき、このMVNOの元締めたるMVNEの回線の違いは意識した方が良い。

DTIのSIMからU-MobileのSIMに乗り換えてもFreebitがMVNEなのは同じなので、通信制約は同じくらい受けるかもしれない。MVNOに不満があってSIMを乗り換えるときは、異なるMVNEにしてみるというのも手だろう。

プロバイダもこんな感じになっています

携帯通信でなぜこのような三重構造がと思われるかもしれないが、実はブロードバンドのプロバイダもこれに近い形になっている。

Freebit社などは社名は聞き慣れないかもしれないが、日本全国の300以上の中小インターネットプロバイダの回線を取り扱っている事業者である。知らず知らずにFreebit社の回線を利用している人は日本全国に沢山いる。

インターネット通信業界はこのような商慣習になっているので、回線選びにもご注意を。