政党とは何か

政党とは何か

政党とは何でしょうか。近年は特定の政党を支持しない無党派層の人々が増加しており、既成政党の時代は終わったという主張が唱えられたり、政党に対して何かダーティでウサン臭いようなイメージを抱く人々が増えています。それでは、政党は本当にもはや無用の長物となっているのでしょうか。政党という社会集団が果たしている役割を考えるために、政党の存在しない社会を想定してみましょう。

政党が存在しない場合、議会には無所属でそれぞれ独立した意見を持った議員が参加することになります。このような状況で政策の審議を民主的に行うには、議員全員(例えば衆議院ならば480人)の意見を知らなくてはなりません。しかし議会では様々な政策を審議するわけですから、480人全員に発言機会を与えるのは現実的ではありません。審議や意思決定を円滑にするために議員の数を減らすという手もありますが、多様な地域や人々の意見を集めて考えるというデモクラシーの理念は大きく後退し、政策がごく一握りの人々によって決定されてしまうことになります。政党が存在する議会では、審議は基本的に代表質問という形で行われます。代表質問とは、それぞれの政党の中で意見を集約し、政党の代表者がその集約した意見を元に質問するという制度です。この制度によって議会は実質的な審議を行うことが「可能」となっていると言えます(実際に今の議会の審議が実質的かは別。この点は後述します)。

行政にも大きな影響を与えます。議会が誰かを首相に指名したとしても、政党として首相を支える拘束性がないために、首相の基盤は極めて流動的になります。したがって内閣として長期的な政策を行ったり、大きな反対も予想される大胆な改革が行いにくくなります。また、国民にとって早急に実施することが望ましい政策があっても、首相は政党の代表者ではなく議員1人1人を個別に説得していかなければならないため、膨大な時間と労力がかかることになります。内閣を構成する国務大臣も、首相が実行する政策を考えるスタッフや調査会も、何らかの組織的な支援や人材供出がなければ充分な機能を果たすことができません。これらの点は、制度は異なっても大統領制や地方議会にも当てはまります。行政府を維持したり、行政と立法の関係を維持するには政党の支援が必要であるわけです。

政党による争点形成

国民にとっても政党がなければ、今の政治で何が争点になっているのか、どのような選択肢(有力な代替案)があるのかを把握するのが困難となります。私達はマスメディアが伝える政党の動向を通じて政治の現況を把握し、政党サイドが組織的に行う大規模な宣伝活動(議会内での代表質問も含まれます)を通じて各種の有力な政策を比較検討して投票行動に反映しています。政党は、国民が政治状況を把握する重要な情報源の一つであり、政党の組織的な活動は国民の政治教育へとつながっています。また、国民が何らかの政治的な要望を持っていたとしても、その要望を実現する代表を送り込むためには1人につき1票しか投票権を行使することができません。同じ意見を持っている人々で団結して行動する必要が生じます。民意達成のために組織的な行動が必要となるのです。

政治家として権力を獲得しようと考える人物にとっても、政党がなければ様々な困難が待ち受けることになります。タレント活動などを行って知名度がある人は別として、無名の個人は自分の政策を1から有権者に浸透させていかなければなりません。しかし、個人では有権者に政策を浸透させていくための能力・時間・費用・技術などを維持するのは困難です。政党が存在すると、無名の個人でも党内で能力が認められたら政治家になるための組織的な支援を受けられます。また、「○○党公認候補の××××です」と有権者に呼びかければ、有権者はマスメディアや政党の活動を通じて知り得た情報と結びつけるため、自分がどのような意見を持っているのか、何を目指そうとしているのかを効果的にアピールすることができます。権力の獲得を目指す者にとっても政党の存在が要請されているのです。

政党の定義

M.ワッテンベルグが指摘した政党機能の特徴

  1. アイデンティティと忠誠のシンボル
  2. 政党的利益の表出と集約
  3. 有権者間、議会内での過半数勢力の動員
  4. 投票者の社会化と大衆支持の確保
  5. 不満と反対意見の組織化
  6. ポリティカル・リーダーの補充と政府ポストの追求
  7. 抗争・紛争の制度化・チャネル化・社会化
  8. セクショナリズムの克服と国益の促進
  9. 政策目標の実行
  10. 政府決定の正当化
  11. 政府の安定化促進

E.バーカー『現代政治の考察』より

政党は二重の性格ないし性質を持っている。つまり、政党は、一方の端を社会に、他方の端を国家にかけている橋である。別の表現を用いると、社会における思考や討論の流れを政治機構の水車にまで導入し、それを回転させる導管、水門である。

このように政党は、デモクラシーの中で多様な役割を担うことが期待されています。しかし、現在のデモクラシーは政党政治の危機に直面していると言われています。危機の本質は、デモクラシーの中で政党が担うことが期待されている社会的役割が機能不全に陥っている点にあります。この点について今後詳しく検証していきたいと考えています。

政党の目的と手段

政党の目的は権力機構の獲得にあります。権力機構の獲得とは、政府を形成し、立法過程の主導権を握るということです。具体的には、組閣、行政省庁のコントロール、役職の配分、予算案を含む各種法律案の準備・提出、補助金の配分など、行政権の守備範囲にある様々な業務を遂行し、立法過程の実質を(自らの評価システムに従って)支配することにあります。この点が利益団体や市民運動と政党との相違点となっています。利益団体や市民運動も積極的に政治に関与することはありますが、自らの組織が掲げる目的を実現するための一環としての行動であり、最終的に組織自体が権力を獲得するという展望までは射程に入っていません。また、小政党は単独で政権を構成する力がないために、連立を組んで政権に参与したり、少数意見の表明や登録によって権力機構に影響を与えようとします。

政党は権力機構を獲得するために、綱領や政策を発表し、宣伝活動や選挙を通じて人々に支持を訴えます。選挙は政党が勢力を拡大するための最も重要な手段であり、デモクラシー下の選挙では多数の有権者から票を獲得した政党が勝利します。しかし、すべての有権者が政治の問題に精通しているわけではありません。したがって政党は、政治的な情報を備えていない人々からも支持を獲得できるように、政治上の争点を単純明快なモデルにして有権者に訴えることになります。例えば、「○○党は利権屋の集団」「○○党の政策で経済はダメになった」「○○党は何もしなかった」「○○党はただ反対しているだけだ」「土建屋の政治をやめれば財政も元に戻る」「地域に利益を還元すれば日本は良くなる」「軍事予算を削減すれば経済は良くなる」などです。このようなモデルにおいては、原因や動機と結果は一対一で対応するものとなり、ある1つの問題があるからこの対策をやれば上手くいくという構図になります。

政党の抱える問題

社会現象(特に経済問題)という高度に複雑なシステムの現象について、そのひとつの局面だけを取り上げ、単純明快ですが粗放なモデルで近似する結果、こうした政策はしばしば部分的な適合性しか持たず、システム全般にわたる複雑多岐な効果を安易に無視することになります。集団についても、「この党は○○だ」という形で固定的なイメージを流布することは、集団内の多様性や実績についての認識をステレオタイプ化することにつながります。しかも、政策が粗放であるだけ単純明快となり、提示する側の政党および提示される側の有権者に納得され、支持される場合も少なくありません。相手の党の主張をいかに論理的に反論するかというよりも、このようなレッテル貼りがいかに成功するかが重要となってきます。

選挙期間中の街宣車による候補者の名前の連呼、駅頭での候補者による握手の展開など、誠意や熱意の披露も、政治について情報を持たない層に支持を獲得するための重要な手段となっています。「頑張ります」というアピールをし、有権者と直接握手をすることによって、地道な効果が期待できるわけです。

また、最近は徐々に状況が変化してきていますが、政党は何らかの形で保守や革新のイデオロギー(政治思想)を持つことにアイデンティティを見いだします。一般にイデオロギー的に保守か革新に傾いている人ほど、政治に関心があり、投票義務感覚も高いといわれています。逆にイデオロギー的に中間に位置する人は、一般に政治的関心が低い人が多く、忠実な支持者とはなりえません。日本において中道のイデオロギーであることを目指した新自由クラブや社民連は衰退の道を歩むことになりました。保革で両端に位置する自民党と共産党は、それぞれに浮き沈みはありながらも、一定のイデオロギー的なシンパシーを持つ固定支持層を獲得しています。

単純明快なモデルの提示、誠意や熱意の披露、イデオロギーによる固定支持層の獲得、いずれも政党が勢力を拡大する上で不可欠な手段ですが、これらの手段が過剰に横行するようになると、国民への政治教育という政党の社会的機能が停滞することになります。無党派層が増加する要因の1つとなっている「政党のウサン臭さ」は、政党による従来の大衆動員手段の行き詰まりを示すものとも考えられます。

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