民主党とスパイの思い出

海江田万里事務所から、「民主党党員登録更新のお願い」という手紙が届いた。「厳しい状況下ではございますが、代表である海江田万里をお支え頂きたく、よろしくご検討いただけますようお願い申し上げます」と書かれてあって、党費6,000円の振込用紙が同封されていた。正直、更新すべきかどうかは迷っていて、まだ返事をしていない。

民主党の党員になるとどんな特典があるかというと、プロパガンダが送られてくる。選挙の依頼と同時に、隔週で機関誌『民主』が送られてくる。いわゆる『赤旗』のような新聞だ。『民主』は『赤旗』に比べて激しく中身が無くて通常の人は読む気になれないだろう。

以前の選挙で『民主』に漫画が掲載された時があって、B級プロパガンダ好きには溜まらないツッコミを感じて思わずfacebookでシェアしてしまった。

Web業界黒歴史シリーズを書いてきたけど、政治の世界も割とダーティーだ。

以前、2000年の衆議院議員選挙で、八王子の新人の民主党候補の事務所を手伝った話は書いた(ニューギニア戦線の祖父と民主主義を守る父と民主党員の私)。

 

八王子の候補の事務所には市民ボランティアが結集していた。事務所を手伝う時にまず秘書と会って話した。「さいとうくんは、コレじゃないよね?」と念仏するポーズで聞かれた。創価学会かどうかのチェックだ。民主党の事務所では自民党や創価学会のスパイが潜り込んでいないかをかなり警戒していた。実際「あの人はスパイなんじゃないか」という噂を事務所の内部ですることもあった。それだけ事務所の情報は筒抜けだった。

 

逆パターンもあった。ある日の夜、「今夜、自民党の陣営が民主党の中傷ビラをバラ撒く準備をしている」という情報が事務所に入ってきたことがあった(どういうルートで入ってきたのかは知らない)。事務所では車を出して、自民党候補の事務所近くに停車した。夜間に自民党陣営が動き出したら、公職選挙法違反で相手側陣営にダメージを与える作戦でいた。その夜はずっと監視していたけど、自民党側の動きはなかった。でもやはり怪文書はバラ撒かれた。

八王子で初勝利したあと、雪深い新潟でも民主党の事務所を手伝った(母は「自殺してやる!」と包丁を喉に当てて叫んだ→民主党まで)。新潟の候補の事務所では、労組が結集して労組選対が立ち上がっていた。労組から動員された人々が「ボランティア」として事務所で作業をしていた。「さいとうくん、これも世直しなんだよ」と労組の幹部の人が語っていたのを憶えている。

私は新潟の事務所で、候補からある密命を受けていた。それは「さいとう、事務所の内部をよく見て何か動きがあったら俺に教えてくれ」というものだった。候補は普段は外に出ていて事務所にはあまりいられない。だから私が候補の目や耳となって、事務所で話される世間話や情報に聞き耳を立てていた。

事務所では中盤以降になってくると、候補への不満がかなり溜まってきて、それを口に出す人達が出てきた。私は「そうですねー」と話を合わせながら、誰がどんな不満を口にしているのか、それに同調しているのは誰なのかを、毎日候補の車の中で報告していた。候補はそれに対して指示を出し、私はその指示に動くように事務所の内部を調整していった。自分が内部スパイになった瞬間だった。

私がFileMakerで労組の名簿を横断的に検索できるシステムを作り、誰が誰の紹介なのかを一覧で見られるようにした。また印刷用レイアウトも整えたので、選挙期間中に発送できる公選葉書の宛名印刷もプリントアウトできる仕組みをつくった。これで労組の「ボランティア」の人達にお願いしていた宛名書きの作業がいらなくなると思った。

でも、候補がそれにストップを掛けた。「さいとう、事務所に仕事をつくれ。事務所に来た人が何も手伝うことが無いというのが最悪のケースだ。勢いが落ちなければ何でもいい。仕事を作れ」 結局、公選葉書の宛名をプリントアウトするのは半分に留めて、残り半分はボランティアに宛名書きをしてもらった。

後半戦は事務所に布団を持ち込んで泊まり込んで、新潟でも初勝利を収めた。

「戸別訪問」「全逓」「電話作戦」「投票日にも本来禁止されている投票依頼の電話を掛ける裏技」「投票所で本人が候補の名前を書いたかどうかを1票の空票を使って確認する裏技」「リーフレットに5,000円を包んで渡している陣営」「日本酒」など色々聞いたけど、あんまり詳しく書くと自分もヤバくなりそうなので書かない。

政治って戦争だと思った。生きるか死ぬか。友人の選挙では告示日に鳩の死骸が事務所に投げ込まれたらしい。

ちなみに、新潟の選挙に関しては私もテレビに映った。「選挙の七つ道具」を持って走り去っていくスーツ姿の人が私。

っていう自分のステマは置いておいて。党員継続どうしようかな…。