テレビは現時点で最もソーシャルで広告費の高いメディア

「テレビは衰退産業」「テレビはつまらない」という話は沢山聞く。しかし、テレビは現時点で最もソーシャルで広告費の高いメディアだ。

(「ペルソナ4」)

2013年の日本の広告費の市場規模は約6兆円。このうち1兆8千億円はテレビ広告費、インターネットは9,800億円と推計されている。日本においてはテレビ広告の方がネット広告より2倍も予算が多い。確かにネット広告は右肩上がりで成長している。しかし、それでも前年比108%くらいの成長率である。しかも、インターネット広告はYahooやGoogleを含む無数のWEB企業でパイを食い合っている状況だ。「ビッグデータ!」「DSP!SSP!」「最適化!」ネット広告の掛け声は勇ましい。しかし、広告規模はテレビの半分にすぎない。

テレビは現時点で最もソーシャルなメディアである。「天空の城ラピュタ」が放映されると、例え自宅にラピュタのDVDを持っていようとも、毎回テレビで放映される積乱雲の中のラピュタの映像を視て、Twitterでみんなが「バルス!」とつぶやくのだ。録画メディアが発達しようとも、毎回放映のたびに。

両親や兄弟、学校や職場の友達とも共通の話題はテレビが作っている。テレビを媒介にしてソーシャルネットワークのコミュニケーションが成立している。インターネットのソーシャルアプリやSNSでは「ユーザーの共時性」がサービスを作る際に重要となる。ユーザー同士でゲームなどを機会に、時間を共有して共通の話題をつくろうという発想だ。現時点で、ユーザーの共時性を最も高い水準で実現しているソーシャルメディアはテレビだ。テレビを視ながら家族で語り合い、ネットでもテレビのネタが話題になる。

「テレビは衰退産業」「テレビはつまらない」「ネットで十分だしテレビはもう視ていない」と言う人も多い。しかし、ネットのニュースサイトには毎日のようにテレビが一次ソースの画像や映像が流され、間接的な部分も含めるならテレビの話題に1日中触れない機会は、ネットを中心に活動している人でもほとんどいないだろう。むしろネット依存が高いほど、テレビの情報に触れる機会は多い。そして、放送事故が起きると普段テレビに全く関心のない人でも話題に飛び込む。

(LINEのテレビCM)

GREEやLINEが成功したのもテレビCMを打ってから一気に普及した。グノシーがいま同じことをやろうとしている。ネット広告はクリック率やターゲット属性を元に配信が出来る最適化効果があるが、一定以上のマス層に認知度を向上させるにはテレビは避けて通れない。

認知度を向上させるためにテレビを使わないというのは、プロモーションに東京を使わないのとほとんど同じ愚かな選択である。テレビや東京は巨大な情報の中継地だ。そこで発信することが一次効果としても高いし、連鎖的に地方にも普及していくのである。

アメリカでは、ネット広告がテレビ広告を追い抜いた。しかし、日本ではネット広告はテレビ広告の半分の規模しかない。この現状認識を元にメディアや広告の認識を組み立てなければ、貧相な結果しか生まれないだろう。

テレビは衰退しているが、「侮れない」。ネットの普及によってテレビの価値は再定義された(WEB企業が東京の渋谷・六本木に集中しているように)。今やネットもテレビの視聴を支える支柱の一つなのだ。