絶版本『どぶさらい劇場』に見る古き良き青林堂

齊藤
きわどい表現が多めなので、はてなブログではなくWordPressの方に書く。山野一氏の『どぶさらい劇場』という漫画をご存じだろうか。

『どぶさらい劇場』とは

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山野一『どぶさらい劇場』は、1994年から『コミックスコラ』に連載されていた長編漫画で、青林堂が単行本を出していた。現在は絶版になっている。

山野一氏はねこぢると結婚した人で、様々な異色漫画を描き続けた天才作家。Wikipediaの山野一氏の項目では次のように書かれている。

『月刊漫画ガロ』1983年12月号掲載の「ハピネス・イン・ビニール」で漫画家デビュー。初期はひさうちみちお的な描線でブラックユーモアやSFの入り混じったシュールな作品や精神や知覚をテーマにした作品を描いたが、バブル前夜にあたる1985年に連載を始めた長編『四丁目の夕日』によって弱冠24歳の時に鬼畜系特殊漫画家の地位を確立する。同連載が終了したのち、主な活動の場を『ガロ』からエロ本に移し、主に荒廃した生活環境で「とことん抑圧」される人々を主人公にした不道徳な作品を描く様になる。

1980年代から1990年代にかけて『夢の島で逢いましょう』『四丁目の夕日』『貧困魔境伝ヒヤパカ』『混沌大陸パンゲア』『どぶさらい劇場』(すべて青林堂刊)など異色単行本を次々に発刊。その描写は極めて凄惨・過激で、「貧困」「電波」「不条理」「差別」「変態」「凌辱」「薬物」「虐待」「奇形」「障害者」「精神世界」「新興宗教」など、ありとあらゆるタブーを題材とした徹底して救いのないストーリーに滑稽さの入り混じる入念な表現で底辺社会の無間地獄を描き続けた。

1990年からは妻であったねこぢるの共作者兼プロデューサー的な役割を務め、ねこぢると共に『ねこぢるうどん』『ねこ神さま』『ぢるぢる旅行記』などにまとめられた異色作品群を手掛け“ねこぢるムーブメント”を作り出した。1998年の末[2]からは、故・ねこぢるを継承した「ねこぢるy」の名義でも活動している。

Wikipedia 山野一

私は多感だった福島県の高校時代にこの本を読んで強い影響を受けた。絶版にしておくには勿体ないカルト級の漫画なので、是非紹介したい。

大金持ちの女子大生からの転落

『どぶさらい劇場』の主役はエリ子という女子大生である。彼女の家は大金持ちで何不自由ない生活を送っていたが、車で通りかかったドヤ街でとめ吉を轢く交通事故を起こしてしまう。

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エリ子は交通事故の現行犯として刑務所へ。刑務所から出てきた時には両親の会社が倒産して、交通事故の賠償金7,000万円が払えなくなってしまった。謝罪にとめ吉の家を訪れるが、そこで出会ったのはとめ吉の妻のまさみと、白痴の青年きよしだった。

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莫大な借金を負った両親はエリ子を置いて逃亡。エリ子は人質としてとめ吉の家に居候することになる。まさみはエリ子ときよしを結婚させようと考えていた。しかし、エリ子はそれに従うふりをして秘かに斧できよしの頭と腕を叩き割り逃走をはかる。怒ったまさみは、エリ子を自宅のぼっとん便所の中に突き落として閉じ込めてしまう。

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ここでエリ子の人格が崩壊。エリ子は自己の精神世界の中で「神」と出会う。神はエリ子の肉体と精神が分離したことを告げ、今までの闇の性質を持ったエリ子ではなく、慈悲と柔和の心を持ったエリ子が肉体を引き継ぐことになったことを話す。業が深い今までのエリ子は神の話を理解することが出来ず、精神世界に留まることになる(以下の画像にはモザイクがなかったので入れました)。

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新しいエリ子は慈悲と柔和の心を持ち、まさみと和解して、きよしと結婚する。新しいエリ子には手をかざすだけで病気や怪我が治る不思議な力が身についていた。この不思議な力に目をつけた新興宗教「大日本まごころ教団」の理事・佐伯は、エリ子を神として崇拝することを決め、まさみやきよしやとめ吉も含めて教団に呼び寄せて大儲けをする。

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佐伯はエリ子の力を使って教団を拡大する一方、エリ子に覚醒剤を投与してその力の更なる覚醒を目指す。そのためにエリ子の精神世界に入って、今までの闇のエリ子の存在を知り、光と闇の両面を支配するために闇のエリ子を現実世界へと引き戻そうとする。しかし、闇のエリ子は全く別な場所で覚醒してしまった。

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出来るだけ無難なシーンだけ抜き出した(本当はもっとエログロのシーンが多い)。そしてクライマックスは読んでからのお楽しみです。こんなに面白い漫画が絶版になっているのは非常に惜しいので是非復刊してほしい。

下層文化の生々しさ

『どぶさらい劇場』もそうだけど、山野一氏の作品には日本の様々なタブーに切り込んで表現した作品が多い。今回描かれていた下層階級のまさみの毒々しさや、白痴の青年きよしの寡黙さ、まさみときよしの近親相姦など、社会の底辺で生きる業の深い人々の生活が生々しく描かれている。

そこに濃い人間の姿が感じられて私は『どぶさらい劇場』がとても好きだ。最近はこういう人間の業の生々しさを描く漫画家が少なくなった。青林堂も変わってしまったし。

古き良き時代の青林堂を懐かしんでやまない。

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