刑罰の基礎知識

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刑罰

罪を犯した者に対する罰。おもに国家が犯罪者に科する。刑罰は、以下のカテゴリに分類される。

1.生命刑

生命を奪う刑罰

1-1.死刑…生命を奪う刑罰。現行法では、監獄内において絞首して執行される。(刑法第11条)(死刑の方法としては、絞首刑のほかに、アメリカの一部の州で行われている電気殺やガス殺、斬首、銃殺などがある。)

2.自由刑

身体的自由を奪う刑罰

2-1.懲役…自由刑のうち、労働(刑務作業)を強制するもの。

2-2.禁錮…自由刑のうち、労働(刑務作業)を強制しないもの。(政治犯等の非破廉恥犯に科される。現行の行刑制度下では、ほとんどの禁錮囚が「請願労働」を行うため、懲役刑との差は実質的にない。なお、禁錮囚が「請願労働」を申し出た場合、これを取り消すことは出来ない。)

2-3.拘留…短期(1日以上30日未満)の拘禁。定役(刑務作業)は科されない。(現状ではほとんど科されていない。なお、刑が確定していない「被告人」や、起訴されていない「被疑者」を拘禁する「勾留(未決勾留)」と混同しやすいので注意。)

3.財産刑

財産を奪う刑罰

3-1.罰金…1万円以上の財産を奪う刑罰。(ただし、減刑する場合は1万円以下になることがある。)

3-2.科料…1000円以上1万円未満の財産を奪う刑罰。(なお、刑事罰ではなく、行政罰などで「過料」というものがある。両者を区別するため、科料と「とがりょう」、過料を「あやまちりょう」ということがある。)

3-3.没収…犯罪に関係する物を奪う刑罰。(なお、死刑、懲役、禁錮、拘留、罰金、過料が単独で科しうる「主刑」であるのに対し、没収は主刑に付随してのみ科しうる「付加刑」である。)

このほか、日本では行われていないが、

4.身体刑

身体的苦痛を与える刑罰。むち打ち刑など

5.名誉刑

名誉を奪う刑罰。公民権剥奪、公民権停止など

というのもある。

死刑(生命刑)

死刑とは、犯罪者の生命を奪う刑罰である。死刑は最も峻厳な国家刑罰の行使であり、その本質が生命の剥奪であるがゆえに、古来よりその存廃に関して論争がなされてきた。日本は死刑存置国であり、現行刑法において死刑を規定している。

死刑存置論の論拠としては、<1>「人を殺したる者はその生命も奪われるべし」というのが国民の法的確信である、<2>世論調査によれば、国民の多くは死刑存置を望んでいる、<3>社会の応報観は、犯人が死刑に処せられることによって満足するものである、< 4>死刑を廃止すれば私刑が増加する怖れがある、<5>被害者の親族は加害者が死をもって贖罪したことにより満足するものである、 <6>法秩序の維持のためには、死刑の威嚇力はなお有効である、<7>死刑は一種の必要悪である、<8>死刑は無期刑に比べて経費がかからない、<9>優生学の見地からも、改善不能の犯罪者は死刑に処した方がよい、<10>大多数の殺人犯人は、彼らの犯した罪の償いとして死刑を歓迎するものであり、彼らの死ぬ権利を否定するべきではない、<11>法の基礎である絶対的正義の見地よりして、死刑は故意の殺人犯に対する最も正しい刑罰である、等がある。

死刑廃止論の論拠としては、<1>死刑は人道的感情に反する野蛮な刑罰である、<2>死刑には威嚇力がない、<3>死刑は復讐を基礎とするものであって、改善主義の理念に反するものである、<4>誤判の場合において、死刑は一度執行された場合回復できない、 <5>死刑の存在は国家が殺人を禁じていることと矛盾する、<6>死刑は犯人の家族に対して重荷を科する、<7>死刑は一般人に対して残忍性を流布し、人命を軽視する結果を招来する、<8>死刑は貧困者に対してより多く科される傾向にあり、不平等な身分的側面を有する、<9>社会からの隔離は無期刑で充分であり、無期刑に代替することにより加害者に被害者の家族の救済をさせるべきである、 <10>死刑は憲法に違反する、<11>死刑は自己犠牲の衝動を満足させるものであり、死刑の制度がなければこうした欲求を満足させるための衝動は起こらない、<12>世論調査の結果は世論を正しく反映したものとは言えず、生命の剥奪という重大問題を数のみで解決することには疑問がある、等がある。

死刑の種類

電気椅子

囚人を椅子に縛りつけ、電極を頭部と下肢につける。スイッチを入れると1500から2000ボルトの電流が流れ、死に至る。アメリカの一部の州などで採用されている。

ガス室

囚人の座る椅子の下に置かれた硫酸入りの容器に、シアン化合物を投入する。密閉された室内に有毒ガスが充満して死に至る。アメリカの一部の州などで採用されている。

致死罪の注入

猛毒の化成品を注射する。多くの場合、囚人を眠らせる麻酔剤、肺の機能を止める筋肉弛緩剤、心臓を停止させる薬剤の順に注射する。アメリカの一部の州などで採用されている。

絞首

首のまわりに結び輪をつくる。足下の落とし床が開き、体の重みで上頸部の関節がはずれ、脊髄が脳から分離し、心臓が停止する。落下距離が短すぎた場合、囚人は徐々に首を絞められていく。落下距離が長すぎた場合、頭部が切り離される可能性もある。日本、イラン、イラク、アフガニスタン、ジャマイカ、マレーシア、アメリカの一部の州などで採用されている。

投石

一般大衆を招いて投石させる。小さすぎる石や大きすぎる石を選んではいけないことになっている。イランで採用されている。

銃殺

囚人を椅子に縛りつけ、頭部を布状のものでおおい、胸のところに標的をピンで止める。数人の狙撃者が発砲するが、狙撃者の心を緩和するために1人は空砲になっている。インドネシア、イラン、イラク、ナイジェリア、台湾、アメリカの一部の州などで採用されている。

斬首

頭部を刀で体から切断する。脊髄に加わる一撃で意識を失わせるためには、一刀のもとで脊髄を完全に切り離さなければならない。そうでない場合、二刀以上が必要となる。

財産刑

一定の金額を国庫に納入させることを内容とする刑罰。日本において全事件裁判確定人員の95%前後が財産刑である。財産刑は、比較的軽微な犯罪について、犯罪者から一定の金額を剥奪することにより、規範的意識を覚醒させることを期待して科せられる。

財産刑の長所としては、(1)財産刑は犯罪の軽重を数量的に表現でき、その執行にも多くの費用を要しない、(2)財産刑は金銭を媒介にして人格的非難の意味を持つため、比較的本人に与えるショックが柔らかく、その苦痛も財産的なものに限られる、(3)財産刑は軽微な犯罪に対する刑罰として、短期自由刑の弊害を回避できる、(4)財産刑は私欲的動機に根ざす犯罪には反対動機をもって報いる点で効果がある、(5)財産刑は本人の資産、収入、性格、家庭状態などに応じて適用することが可能であり、自由刑よりも予防的効果を期待することができる、などがある。

罰金刑の短所としては、(1)財産刑は貧富の差によって効果が全く異なり、刑罰としての公平性に欠ける、(2)財産刑は受刑者の人格とは無関係な財産権に対するものであり、その執行が一時的なものであるから、刑罰としての効果が薄い、(3)罰金は本人以外の者によっても支払いが可能であるから、刑罰の一身専属性の本質に反する、(4)財産刑は営利的犯罪に対して無力である、(5)罰金支払不能の場合は労役場留置の処分を受けるので本来軽微であるはずの罰金刑が人によって重刑となり、刑罰効果の不公平を惹起しかねない、などがある。

自由刑

受刑者を一定の施設に拘禁して、その身体的自由を剥奪することを内容とする刑罰。現行刑法では自由刑として、懲役、禁錮、抑留の3種類が規定されている。この自由刑のうち、比較的短い期間に属するものは短期自由刑と呼ばれる。短期自由刑の是非を巡っては様々な論争がある。

短期自由刑廃止論者の論点として、(1)短期であるため教育・改善手段を講ずる余裕がなく、威嚇力もない、(2)短期拘禁は家族の物質的・精神的な困窮をもたらすのみで、受刑者の社会復帰も困難となる、(3)執行場所はおおむね設備が充分ではなく、適確な職員の指導を不可能とするため、むしろ悪風に感染させることになる、(4)この種の刑罰の受刑者は大多数が初犯者であるため、拘禁の恐ろしさの念を喪失させられ自尊心の低下をきたす、(5)短期自由刑受刑者による施設の過剰な占領は行政事務に過大な負担をかける、などが指摘されている。

短期自由刑肯定論者の論点として、(1)初犯者、機会犯人、特に過失犯にはショック効果がある、(2)刑務所の実状を見るならば刑期の短いことはかえって利点になる、(3)短期自由刑は、罰金刑に比べて刑罰の性質をよく示すものであり、それなりの意味を持ち、貧富の差を問わず公平である、(4)一般予防の観点から、短期自由刑を保持することは必要である、などが指摘されている。

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